関悦史さん「閑中俳句日記(別館)」にて武藤紀子句集が取り上げられています。
◆現代俳句文庫66
完璧な椿生きてゐてよかつた
この人は前々から恰幅のいい句を詠む人で、花は桜、魚は明石の桜鯛ではないが、桜や松、鯛や鶴などという大きな題材を詠ませると素質と響き合うとでもいうのか、玉のような句を吐く。
(解説より:長谷川櫂)
◆収録作品より
うしろから冬が来てゐる大伽藍
魚は氷に上りて薄き山の線
大男通草の山に入りゆけり
木がすべて櫂に見ゆる日かたつむり
八朔の餅を包むに大きな葉
詩人来て木の葉を山羊にあたへをり
青空に溶けてしまひぬ返り花
息吐いて息吸うてをり古ひひな
初夏の我に憂きことなかりけり
いなびかり北上川もひかりけり
*
[むとうのりこ(1949〜)「円座」主宰/「古志」「晨」同人]
解説:宇佐美魚目/長谷川櫂
収録作品:句集『円座』抄/『朱夏』抄/『百千鳥』抄
四六判ペーパーバック
104頁
2011.03.03刊行