◆第一句集
ずつしりと大根ほんたうの重さ
余計なことを考えず、直球勝負の男俳句を堪能すればそれで十分だとは思う。だが、時代の趨勢を意識したとき、『夏の峰』が否応なく担う役回りもまた見えてくる。そこが興味深く、かつ心強い。
(栞より:三枝昴之)
◆自選十五句より
きんぽうげ野は金色の夕明かり
雷の近づいてゐる野外劇
つはぶきや紅さす母を見て通る
舟虫の真つ黒に散る月夜なり
水の輪を出られずにゐる春の鯉
炎天のどこ歩きても印度象
昼顔や嫌ひな人に会ひにゆく
秋の風きりん遅れて歩き出す
春筍の土まみれなり別れなり
空つぽの鳥籠十六夜のひかり
*
[ひろせえつや(1959〜)「白露」同人]
栞:三枝昴之
跋:井上康明
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装グラシン巻
238頁
2011.02.03刊行