◆第一句集
餌を引いて蟻の声なき祭かな
こうして抽出しながら思うのは、季語の選択に狂いがないということ、見事と言えるほどに言葉が生きている。感得した夫々の詩情が確りとしていて曖昧さのない点は、むしろ驚きと言ってもよい。
(序より:山上樹実雄)
◆自選十句
ぽつぺんはひとりぼつちの音を出す
葉ざくらや越荷の?笥地に置かれ
夢の尾にたはむれてをり明易き
大魯迅全集でんと曝しけり
たかだかと大向日葵に瑕瑾なし
気ののらぬ足もあらむに百足虫かな
厄介は男の美学草じらみ
私小説のやうな匂ひに初しぐれ
丹波黒豆買うて師走の顔となる
煤逃の上手な父でありしかな
*
[にいじまさとこ(1930〜)「南風」同人]」
序:山上樹実雄
装丁:君嶋真理子
四六判上製函入
200頁
2011.01.27刊行