◆現代俳句女流シリーズ燦２
朝東風や胸中の帆を立て直す
自らの生を肯いながらも、また前を向き、また敢然と歩み出そうという作者の意思が生み出したものだ。微笑みの内に秘められた鋼の強さが、これらの句には湛えられている。
（序より：高野ムツオ）
◆高野ムツオ選
胸中に青水無月の静電気
八月は竜神と父の匂いする
秋の暮うしろに葦切鮫の口
寂しさに遠近のあり桐の花
約束のように蝋梅匂いけり
初雲雀潮の匂いを曳きながら
西日濃くなる自転車漕ぐたびに
雪暗や塩竈駅が光りだす
浜豌豆波の奥から夜が来る
魂はかたちを持たず竹落葉
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[おがさわらひろこ（1930〜）「小熊座」同人]
序：高野ムツオ
装丁：山岡有以子
A5判上製カバー装
114頁
2010.10.05刊行
