◆第一句集
雪嶺へ深々と礼上京す
「深々と礼」に作者の思いがこもっている。「上京す」とあるから故郷を離れるときの一句であろう。作者は故郷をたずねるたびに、夏は青嶺にむかって、冬は雪嶺にむかって、深々と礼をして帰るのだ。ふるさとの山々はその敬虔な姿を黙って見守っている。
(序より:大串章)
◆自選十句
梅真白大筆小筆洗ひ干す
駅弁の短かき箸や山笑ふ
青竹の組まれて匂ふ鳥曇
飛花落花自己紹介の始まりぬ
母逝きて朝顔市を素通りす
逃水を追ひて他郷にまぎれをり
噴煙の倒れてきたる花野かな
水飴のピンと尾を引くそぞろ寒
大寒や割りたる竹のなか真白
脚踏み替へて凍鶴となりにけり
*
[おのざききよみ(1936〜) 「百鳥」同人]
序・大串 章
跋・櫛原希伊子
四六判上製カバー装
装丁・奥川はるみ
2010.10.16刊行
216頁