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◆文庫サイズのハンディーな詩集
「種と蟻」
あわよくば
かれとぼくのよろこばしい類似をのこしてやろう
かわききってしまえば
かれとぼくはこれからはじまるのだ
とりはだ
なんて誰にもみつからない
だから
しょうちんする蟻のためいきもわかるよ
汁
とかわってこぼれてしまった果実のこと
もがれるから
種にかくれてしまうことだってできる
誰もかれも
けっきょくは甘くていい人
(やめなさい)
芝を
あらすことすらできない
もう帰ってもいいんだぞ
これからの地はかれればいい
誰にもいわなかったのは
しかたがない
そっぽをむいてわらう友達がそばで
蟻といっしょににげたかれとぼく
これっぽっちも用意していない青空のもとで会いましょう
(「種と蟻」より)
*
[かしわぎしずか]
42頁
20100929刊行