◆第一句集
花八つ手拳上げたる甲斐の山
甲斐の山容のきびしさと人の温もりを「拳」と捉えた感受に共感した。それとともにすぐ身辺にあったであろう「花八つ手」の地味でくっきりとした咲きざまに託した心の在り様が偲ばれる。
(序より:廣瀬直人)
◆自選十句
木曾馬がをり秋草が揺れてをり
花を見るとき介添の手をはなれ
大寒や森分けて出る五十鈴川
春満月絵巻より出づ笙のおと
老鶯の遠くは歌仙巻くごとし
誰からも遠く涼しく鳥翔てり
桟橋へ花束下ろす師走かな
溶岩を吐き出して山眠りたる
横笛にせんと竹伐る初時雨
み仏へ時はるかなりかげろへり
*
[なかはた・ちずこ(1944〜)白露会員]
序:廣瀬直人
装丁:奥川はるみ
四六判上製カバー装
2010.04.22刊行
198頁