◆遺句集
出来あいのことば、お仕着せの表現を一蹴してはばからなかった葉留実さんだが、みずからのことばの拠りどころとしたのは、自分を簡潔に、まっすぐに伝えられる語り口を持ったことば、日常の飾りのない、生気あることばと出合うことだった。
(栞より・鈴木章和)
◆自選10句
わがままに死ぬ日も決めて冬苺
のぼらうとしてものぼれずかぎろひぬ
雲も水も旅をしてをり花筏
まくなぎに出口入口ありにけり
人生のひと日の今を若葉風
ぞくぞくと井戸に集る額の花
囀りや自転車なほしてくれる間も
花木槿夕方までに書く手紙
落し文解けば静かに産屋あり
長旅の川いま海へ大晦日
*
[あいおいはるみ(1940〜1995)]
栞:鈴木章和/笹本千賀子
装丁:君嶋真理子
B6判フランス装
114頁
2010.03.21刊行