◆第二句集
東京下町育ちの著者の人付き合いは、おしなべて「盃ふたつ」の相対尽(あいたいづく)である。さればその俳句も自ら気ッ風の句となる。歯切れのよさが気分いい。
(帯より・綾部仁喜)
◆綾部仁喜選より
桜蕊降る人間は人間科
灯がひとつついて夜店の匂ひかな
やや寒や流しの端の皿小鉢
一本のカーネーションのリボンかな
子を産まぬかろさありけり吾亦紅
たましひのちうぶらりんや衣紋竹
到来の古酒に盃ふたつかな
卓上に茶のさめてゆく夏の月
風呂吹や夫の言葉はありがたう
こころざしつらぬくごとく滴れり
*
[やづかあや(1916〜)泉同人]
帯・綾部仁喜