◆第一句集
初景色蔵王もつとも白き山
句集全体を通して「白の叙情」とでも言うべきものが特色としてあるように感じられた。その白は蔵王嶺にかがやき、最上川に降り込む雪の白さであるばかりでなく、故郷にそびえる霊峰富士山の白さとも結びついているようである。
(序より:松尾隆信)
◆自選十句
淡交の友に文書く花のころ
祖母ありし頃青饅は嫌ひなりし
月山の蚋に二の腕螫されけり
秋雲の影は流さず最上川
ヴァイオリンの音のやうなり風花は
ほどほどのおしやれ四月の雪がふる
蛇除くる金剛杖で掬ひ上げ
冬よ吾は寒冷地仕様にはあらず
自転車の膝に雨くる花あふち
見えてゐて音の届かぬ松手入
*
[きしさなえ(1952〜)「松の花」同人]
序文:松尾隆信
跋文:幸田和子
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装グラシン巻き
224頁
2009.10.04刊行