◆第一句集
鶯の声の五月となりにけり
桜草楽譜のコピーあたたかく
ここに見られるような現代的で軽やかな詩情は、季語の再発見にも繋がってゆくだろう。このような作品を見ていると、なにか安堵にも似た頼もしさを感じてくるのである。
後閑さんの詩のきらめきが読者の胸にとどくことを、私は疑わない。
(序より・石田郷子)
◆自選10句より
風鈴を踵を上げて吊しけり
ぶらんこの背中しだいに強く押す
案山子より深く帽子を被りけり
鍋蓋に湯気ついてくる鰤大根
七人の小人隠るる草紅葉
日傘より少し離れて歩きけり
着ぶくれやみんな上向くエレベーター
はじめから鳴き直したる法師蝉
冬空へたとへばこんなラヴソング
赤とんぼきれいな水に卵生み
*
[ごかんたつお(1969〜)「椋」所属]
序:石田郷子
栞・挿画:つげ忠男
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
182頁
2009.09.10刊行