◆第一句集
石仏の御手に触れゐてあたたかし
石仏は野仏の類であろうか。磨耗して御手の指先も定かでないのかもしれない。ほのかに膨らみのあるところが御手と思い、そこに己が手を触れた。その時、季語の「あたたかし」に作者の心が触れたのである。春の光のあたたかさだけではなく、石仏のやさしい加護を感受したからであるにちがいない。
(序より・上田日差子)
◆自選十句より
気づかずにゐて柊の花の時
浜木綿の足裏に砂のせめぎ合ふ
谷うつぎ水にも出会ひありにけり
椿落つ峡の四辻の寄せ仏
樽ダンスてふ抱き合うて天草踏む
石仏の御手に触れゐてあたたかし
山を揉む風を聴きゐる雨月かな
外流しに束子の乾く冬隣
風音の夕べ静もるさくら餅
綿入や傍に母ゐるやうな
*
[みぶ・さだこ(1932〜)ランブル同人]
序:上田日差子
装丁:奥川はるみ
四六判上製カバー装
228頁
2009.07.05刊行