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●第三句集・遺句集
本書『楪』は『黄繭』『藤袴』に次ぐ六本和子の第三句集である。平成四年から平成十九年までの十六年間の二百六十七句を収録した。大方は自選であるが、厳選であったため句数が整わず、幾許かを私が補足した次第である。
母は殿村菟絲子俳句を最も理解していた弟子であったと思う。奇しくも菟絲子先生の忌日と同じ二月九日に、母は逝ったのである。
(あとがきより・永方裕子)
●永方裕子抄出
楢山のいづこ水音寒の明け
堅香子の花や天つ日傾ける
初寅のこの一枚の青き天
乾坤の夕べむらさき八重桜
灯さぬ晨あるべし螢籠
水無瀬野はただにさわさわ帚草
実千両師より先立ちてはならず
つくつく法師つくづくこの世補陀落(ぽーたらく)
白梅の日に異(け)に泪薄墨に
凍蝶の翅立て直し立て直し
*
[ろくもと・かずこ(1911〜2008)]
四六判並製ソフトカバー装
編者:永方裕子
装丁:奥川はるみ
170頁
2009.06.20刊行