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◆諷詠同人故大谷静鳳氏の遺句集
『虚子俳話』の中に「安らかな人生を閉ぢる」の章がある。「四季の循環に意を注ぎ、花鳥諷詠の詩に遊び得た事により、人生の幕引きも安らかになる」と。
平成十八年春、花の季節を終えようとする頃、静鳳は一男二女孫八人三人家族の新しい炎のエネルギーに後事を委ねて、安らかな幕引きをすることが出来た。
(あとがきより)
◆句集より
いとはんの襟足長く初詣
晴着の子福豆貰ふ肩車
いざよひて雲のほころび待てる月
桐の実の色づき初めてかたくなに
春光を楽しんでゐる車椅子
古雛の淡き眉目にある愁
ほろ酔の歩けば軋む川床なりし
乙姫の居らぬ龍宮走馬燈
会所場といふ底冷のするところ
寒灸つぼ外れたる熱さかな
*
[おおたにせいほう(1918〜2006)「草紅葉」「諷詠」同人]
題簽・序文/後藤比奈夫
装丁/君嶋真理子
四六判上製函装
184頁
2009.05.24刊行