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『未知の音楽』とは一体どんな音楽だろうか。誰もが知らない未来のモーツァルト、シューベルト、はたベートーベン。どこに潜んでいるのかも知れない巨匠たちが作曲し、演奏し、声高らかに歌う未知の音楽。それを著者井上芳子は、
瓢の実に未知の音楽詰りゐし 芳子
と、瓢の笛に聞き止めた。瓢の実はイスノキの葉に出来る虫えい(ちゅうえい)。虫が出たあと小さい口があくが、そこに口をあてて吹くと「ひょう」と鳴る。私たちはそれを瓢(ひょん)の笛と言って、秋の季題として扱っている。吹き方が難しく馴れないと、なかなか「ひょう」とも鳴ってくれない。著者はそれを聞いていて、これは上手に吹けばいくらでも楽しい音色に吹けるだろうと思ったのである。皆が瓢の笛はむずかしいという句ばかりを作っている中で、芳子さんは飛躍して前向きの感性を働かせたのである。俳句作りにはこの感性が必要なのだが、これは誰でも備えているものではない。
(序より・後藤比奈夫)
◆本文より
加賀商家水琴窟に土間涼し
山笑ふ子が弾くヨハンシユトラウス
仕込唄朝の寒気を破りをり
雲の峰大本山に聳えけり
体脂肪減らず食積減りにけり
*
[いのうえ・よしこ「諷詠」同人]
題簽/序・後藤比奈夫
装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装
196頁
2009.05.14刊行