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◆あなたへ
私が大好きだった先生も夫ももういない。この地上のどこにもいないのだ。夫が亡くなってどのくらいの歳月が経っただろうか。その間、多くの友人に支えられ、ここまで来ることができたのは、言うまでもないが、実は韓国ドラマの「冬のソナタ」にも、どれほど癒されたことか。
夫と私は親の反対を押し切って、アメリカで結婚をした。親にはずいぶん心配をかけてしまったが、ウェディングドレスを着て雪の降り積もっている中を、手を取り合って写真館へ走ったことが、きのうのことのように思い出される。
(「あとがきにかえて」より)
白薔薇(サマースノー)にことば託して逝きにけり
青インクゆらしてみたる薄暑かな
帯をとり涼しくなりし新刊書
雨粒のつぶての如し巴里祭
ころがりし錠剤追へる螢の夜
十薬のかすかに匂ふ少女かな
子つばめのあかるき雨にとび出せり
白ばらの一番咲きを夫に剪る
小さき花揺りかごとしててんとむし
夫に似し声をとなりに遠花火
双眼鏡しまへば来たりほととぎす
◆著者略歴
[さいとうりょうこ]
装丁・君嶋真里子
四六判並製カバー装
178頁
2009.05.11