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帯・金子兜太
この人の俳句を読んでいると、里山に春が来て、最後にぽこっと一つ、山頂ちかい凹みに残っている雪、その丸いかたまりが見えてくる。しかも、その雪の丸いかたまりはしだいに綿か羽のかたまりのようにも見えてくる。もやっとした、やわらかい感触になって、芽ぶきのはじまった枯木のなかでぼんやりと、なんとなくにこにこと、そこにいるのである。金子兜太(帯より)
◆自選12句
朝顔の顔でふりむくブルドッグ
麦藁帽夕暮れのようにふりかえる
えんぴつで描く雨つぶはひぐらし
蜻蛉にまざっていたる父の顔
西口はよく晴れている花衣
二次会や白鳥の中に入っていく
母はひろってきれいに毬をあらう
海しずかヌードのように火事の立つ
僧ひとり霞の中へ掃きにゆく
ひよこ売りについてゆきたいあたたかい
青ばかり使う日子猫抱きにけり
そのほかにれんげのかんむり流しけり
*
[こしのゆみこ(1951〜)]
序:金子兜太
跋:小野裕三
装丁:山田朝子
四六判フランス装グラシン巻
212頁
2009/04/01刊行