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帯・鷹羽狩行
去りぎはにやうやく鳴けり河鹿谷
河鹿の澄んだ声を聞こうとはるばる出かけ、あきらめて帰ろうとしたとたんに鳴いた。人生の機微にも通うもの。
隣り合ふ大根すだれ柿すだれ
さりげなく詠い、昔ながらの生活と人情をしのばせる。
燃え尽きるときはそれぞれ曼珠沙華
盛りには競いあった花も、滅ぶときは「それぞれ」というあわれ。
いずれも生活体験を土台にリアリティーをもって迫る。
(帯より)
●鷹羽狩行抽出
隣り合ふ大根すだれ柿すだれ
つひに口割らぬ柘榴を壷に挿す
去りぎはにやうやく鳴けり河鹿谷
燃え尽きるときはそれぞれ曼珠沙華
だれよりも背筋まつすぐ生身魂
散りそめてより仰がるるえごの花
流木に堰き止められて盆のもの
道行の照らし出されて初芝居
なほ道のなかばなりけり岩清水
北窓を塞ぎて北の国を恋ふ