[立ち読みする]
甲斐という風土の中で、季節の移ろいを敏感に捉え、丁寧に詩心を育てて、平明に大らかに一句に成している。どの句にも作者の心が通っていて、奥が深く、余情が広がる。
鍵和田ユウ子
●自選10句
根の国のいろありとせば牡丹の芽
ひとり来て花の満つるは怖ろしき
何処へ出るにも山越ゆる朧かな
野火走る野に栖むいのち狩り立てて
はつなつや一鳥あをきこゑ放つ
田水沸くひたすら南無阿弥陀佛かな
玉虫や富士の樹海の深きより
風鐸にしばらく止まる秋の風
南無遍照しぐるる比叡仰ぎけり
ひえびえと身より離るる腑のひとつ