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帯・清水哲男
序・中原道夫
川名将義の句の軌跡は扇形打法を思わせる。
此処と思えばまた彼処。
実にのびやかで自在な球運びだ。
けれども、決して身体の軸がぶれることはない。
魂の錘鉛が、常に真っすぐに
地についた人生に下ろされているからである。
信頼できる表現者だ。(帯・清水哲男)
●清水哲男 10句選
木々なれや春を溜めゐる力瘤
日に濡れて月に乾きし干潟かな
湾岸へビルの打ち寄す鳥雲に
夜気を抜き岐阜提燈をたたみけり
あぢさゐや固くは撚らぬ雨の絲
片蔭に入る含羞の半分も
巨頭並びて満月の出を待ちぬ
露の世の未踏の老いへ生まれ来し
いちにちを海に日の入る海鼠かな
年玉にははの乳房をさはらする