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[対中いずみ / 風を嗅ぐ鹿 〜川島葵さんのこと](「週刊俳句 Haiku Weekly」より)
●精鋭俳句叢書serie de la fleur
序・石田郷子
栞・千葉皓史
動物は一人で住んで蓼の花
植物の、生きものの息づかいを感じ、人々の心の有りように目を向けるとき、葵さんは静かに腰をおろし、身の内の野性に耳を澄ませているのではないか。(序より)
●自選十五句
凩や子供が子供呼び集め
我もまたハチ公で待つ秋暑かな
ひとつかみ秣をやりて秋曇
龍淵に潜む楠の葉きらきらと
冬麗の深さに猫を埋めにけり
のんきものと呼ばるる餅を裏返す
寒ゆるむお湯が沸くのに眠たくて
雀らの一日低き梅の花
耕しのときをり跪きにけり
永き日の二階に辞書を引きにゆく
昼を焚くほむらに春を惜しみけり
片膝を地に置く茅花流しかな
さみしさの押し寄せてくるゼリーかな
オフェリアの手の組まれゐる水草かな
切岸の一樹の揺るる三尺寝