第32回 俳人協会新人賞受賞!
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◆第一句集
大切な人の掌蝶生る
辻内さんはたぶん、ピアノでは果たせない表現の可能性を俳句に見出したのだと思う。この句にも、ピアニッシモよりさらに小さな響きを聞き取ることができるだろう。それは、世界を見つめる辻内さんのポエジーの飛び立つ響きに他ならない。
(序より:小川軽舟)
●自選一〇句
硝子戸は海の入口春の暮
噴水の向かうの事件見てゐたり
炎昼の階段掴むところなし
箱の蓋開いてゐるなり枯野原
愛叫ぶロツクや秋の金魚飢う
ゆふぐれの雲の色なりしやぼん玉
父の日の郵便局の暮色かな
石よりも岩しづかなりくろあげは
水指の蓋開いてゐる桜かな
大切な人の掌蝶生る
[つじうちきょうこ(1959〜)]
序:小川軽舟
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
174頁
2008.08.29刊行