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青揚羽樹下草上の羽一枚
青揚羽の一枚の羽を樹下の草の上に見出して、痛み、あるいは悼みの情を伝えようとしたものだが、それだけなら普通作に終る。普通を超えて美の感銘を誘うのは、出会いの具体的な景を、想像力もろとも、喩を宿した映像としての景に仕上げたことによる。(序に代えて・金子兜太)
●自選10句
青揚羽樹下草上の羽一枚
乳房や真白く遠き冬の月
鏡片のまだ光吸ふ原爆忌
うたたねや魚になつて登高す
こんなにも世に鋭利なるつばくらめ
マシュマロの食感ががんぼの歩行感
芽吹く前その骨格を覚えおく
建築を業とし蜘蛛の網掃ひえず
青梅雨や樹下は白雨となりにけり
煤逃げの常なる考や窓をふく