◆第二句集
[立ち読みする]
第一句集『行雲』に呼応する本集も、一点の執着なく物に応じ事に従って「行雲流水」まことに自在である。
春風や子牛の耳に番号札
に見られるごとく、彫琢された作品はどれも豊潤で、かなしびに満ち仏心が匂っている。
(阪田昭風)
●自選十五句
三月堂坐せば淑気のおのづから
あたたかや卒寿の母の受答へ
春風や子牛の耳に番号札
伎楽面みな大きくて時鳥
野宮の梅雨の湿りを歩みけり
石橋を渡り蛍に近づきぬ
大湯屋の地べたに蛍光りをり
仏にも暑さを問うてゐたりけり
宝物並べる如く梅を干す
大仏に白露の月の大きかり
夕映えの奥山さして鳥渡る
松明をしつかり抱へ虫送り
新しき数珠掌になじみ豊の秋
立冬や五徳の坐り確かめて
白鳥の六羽に遅れ一羽飛ぶ
[もりやかずこ「嵯峨野」同人]
定価 本体2667円+税=2800円
装丁・君嶋真理子
序・阪田昭風
4/6判上製カバー装
218頁
2008.09.01刊行