[立ち読みする]
◆ 第一句集
「関白忌昨日に宇治の凍返る」
この関白は太閤秀吉ではない。宇治の平等院を建立した藤原頼通のことを指している。宇治殿と呼ばれた彼は、承保二年二月二日に亡くなっているから、平等院では忌を修しているのであろう。こういう宇治ならではの行事を詠まれているというのは、幸さんがよほど宇治という土地に愛着を持たれていることの証しだと思う。(三村純也)
◇自選一〇句
遺言を夫が書きたる二日かな
井戸蓋の竹青々と初雀
天に向け放つ追儺の終りの天
買物の歩のゆるゆると日脚伸ぶ
朧夜の東寺の白く長き塀
這ひ這ひの汗の顔上げお尻あげ
橋涼し袖いつぱいの風入れて
数珠玉のびつしり少年院の塀
散らばりて落葉の中の写生の子
散髪に夫を追ひやり年用意
装丁・君嶋真理子
序・三村純也
4/6判ソフトカバー装
196頁