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◆ 精鋭俳句叢書serie de la lune
吸飲みに残りし水や冬夕焼
2006年1月、金子さんのご母堂が逝去された。この作品はその遺品のひとつを詠んだものである。巧みな心象風景の句であるが、ここには小手先の技巧は微塵も感じられない。こころの奥底から出たはだかの言葉だからである。
(栞・鈴木茂雄)
◇自選十五句から
江ノ電が来るよ木の芽を揺らしつつ
鳥雲に入るや微糖の缶珈琲
囀りの一樹祈りの木となりぬ
少年の吾に呼ばるる草いきれ
夏休みマーブルチョコの赤青黄
貝殻を洗つてゆきし大夕立
永遠に消えない虹を分かちあふ
大いなる花野の果ての無人駅
いま母を詠まむ風花消えぬ間に
しみじみと昭和の匂ふ炬燵かな
かねこあつし「新樹」同人(1959〜)
定価 本体2400円+税=2520円
栞・鈴木茂雄
装丁・君嶋真理子
4/6判並製カバー装
200頁