◆ 第一句集
[立ち読みする]
「そら豆の痕がそのまま莢にあり」この写実力。感動というけれど、作者を感動させた対象を、その当の作者がきっちり捉えて的確に描写できなければ、どうして他を感動させることができるだろうか。この隙のない緊密感は、故に読む者にしばしば大きな安心感を与えるといっていいだろう。
(辻田克巳)
◇自選一〇句
涸池の底の山河を歩む鳥
紅梅の空を赤子の眩しがる
来世などあればの話春氷
春暁の六根疎くなりゐたる
径に出て鉱泉宿の今年竹
白山の雪燦々と五月来る
冷し酒口中しんと通りたる
今生の今できること紫蘇を揉む
むかしほど蜜豆うまくなくなりし
鶏頭のぶ厚き鶏冠雄ならむ
きただももよ「幡」同人(1931〜)
定価 本体2476円+税=2600円
序・辻田克巳
装丁・君嶋真理子
4/6判上製カバー装
212頁