◆ 著者第一句集
どこにでもいる男の、ありふれた日常の中から生まれた俳句の集まりなのであるが、実は、この句集の魅力も強みも、そうした平凡であることのうちに存在している。平凡だが、これは大正でも、昭和の、戦前、戦中生れでもない、紛れもない戦後団塊世代の総量が渦巻いている句集なのである。
高野ムツオ(帯文より)
子を棄てよ焚火の丈に育ちなば
パンのみに人は生くべし田螺鳴く
昭和七十一年なりき昼寝覚
断水の体育館や星祭
沼風は波郷の微熱合歓の花
溶暗の飢餓海峡やななかまど
にんげんのかくまで軽し蓮見舟
跋文/帯文・高野ムツオ
装丁・君島真理子 四六判上製カバー装
●著者略歴
昭和22年新潟県生れ。「小熊座」同人。現代俳句協会会員