◆ 著者第一句集
<雲丹の千本の櫂したたれり>
海胆の棘を舟の櫂に見立てた。紫黒の棘が其其別々の方向に動く──なるほどあれは殼から生えた櫂、であると。千本というやや誇張した把握かと思えば、恐らく下地には“針千本──”という数詞へのイメージを確保していると思われる。秀抜な見立てとその説得力に驚嘆した句である。
言霊の幸わう国に生を受けた以上、もっと深く言葉を耕し、更に新しい詩因を訪ねたいと思い始めている作者。頼もしく思う。中原道夫(序文/帯文より)
晩節を曲げず桜の散りゆける
朧夜の夢のつづきを北枕
雪しんしん柩にウンスンカルタかな
初蝶に誰もかまはぬ渡島式
やや踊る構へもしたり青蟷螂
美しき理解は誤解氷面鏡
序文/装丁・中原道夫
四六判上製カバー装 210頁
●著者略歴
昭和5年石川県輪島市生れ。昭和23年石川県立輪島高等女学校卒業。平成10年石川県俳文学協会会員。平成12年俳人協会会員。平成13年「銀化の会」に入会