◆ 著者第一句集
<ほととぎす啼くたび夫のわれを見る>
鳥好きの夫君が時鳥の啼くたびに、少し遅れて歩く、あるいは一緒に歩いている作者を見たり、振り返っては「ほら、ほととぎす」と口に出さずに知らせるというか、目で話をするのか、阿吽の呼吸で頷き合っている姿が、思い浮かぶような情景である。(略)
穏やかに充足した日々の中から編まれた、句集『白夕立』は、声を大にせず、微笑と倶にここに存在し、俳歴だけの略歴に半生を委託するかのように佇んでいる。こんなにさっぱりとした句集も少ないだろう。そこに作者の心意気を汲みとって頂きたいと思う。
快き読後感のままに、花のあとのしばたたくような若葉を感じつつ擱筆。山田みづえ(序文より)
葡萄棚枯れてふるさと眠りそむ
天狗山より白夕立の来たりけり
もやもやの友の抽象画あたたかし
木下闇都恋しと真野御陵
鉄線花の白の大きく母いまさず
心地よき風や葭切もう来たか
序文・山田みづえ 装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装 194頁
●著者略歴
昭和11年栃木県生れ。昭和19年山梨県甲府市に移る。平成2年「木語」入会。木語同人。俳人協会会員