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添水鳴り雲は高さをいそぐなり
自分の生から自然に滴り落ちた雫のような、謙虚さと積極性、自然といのちの本然へゆっくりと志を持って肉迫する句が並ぶ。昭和63年から平成12年までの400句を収めた第2句集。
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美保さんは志を持つ作家である。春は花、夏は青葉、秋は紅葉に魅せられて、その幹を認める人は少ないが、冬は枝々の先まで生気を漲らし、時にくれないの雫を滴らせて無限の季節と思想をもって立っている。そのいのちの支えが桜の幹であり、美保俳句である。
あとがきに「私にとって俳句とは、自分の生から自然に滴り落ちた雫のようなものである」と書いている。謙虚さと積極性、自然といのちの本然へゆっくりとしかも志を持って肉迫する著者の俳句は信用出来る。神蔵器(帯文より)
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とうすみは軽し夕風よりかろし
添水鳴り雲は高さをいそぐなり
棚経へ次の部屋より風送る
みちのくの空の湿りや星祭
別れ来しばかりの母へ初電話
白粉花の夜は蜜の香を流しけり
風の来て未だ昂らぬ芭蕉かな
帯・神蔵器 装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装 226頁
●著者略歴
昭和28年3月29日静岡県生まれ。昭和48年「風土」に入会、石川桂郎に師事。昭和51年島谷征良主宰「一葦」創刊に参加。現在「一葦」編集人・同人、「風土」同人、俳人協会会員