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◆ 著者第一句集
<亡妻の形見といふは羽抜鶏>
の一句に出合った時の衝撃はいまなお鮮明である。妻に死なれたある男が、妻の形見は、この妻が手塩にかけて育てた羽抜鶏だ、という提示に驚きながら、作者はその男の慥かさに感動しているのだ。この男の慥かさが視える作者には薄っぺらな人情は無縁である。これが恒子俳句のしたたかさなのである。鈴木鷹夫(序文より)
八方の畦火の中の正午かな
じやが芋のでこぼこやがて孫が来る
古びたり雛もマルクス全集も
白魚を成仏させて四畳半
紅葉且つ散りぬ国宝に凡人に
口紅の百の直立巴里祭
大綿を抜けし顔なり夕ごはん
抱かれし人の骨抱く寒さかな
序文・鈴木鷹夫 装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装 198頁
●著者略歴
1924年東京都生れ。1993年「門」入会。1995年門同人。俳人協会会員