茶道に関する句、亡き母を偲ぶ句、娘が嫁し、孫が生まれた感懐を詠んだ句など、昭和55年から平成12年までの作品を収める。
◆ 著者第一句集
<形代に遠き子の名も書き重ね>
<春満月娘はそれぞれの家をもち>
<川幅が母と子の距離絮毛飛ぶ>
三句とも目に見える具象性がある。そして、子の幸福を願いつつも、母の心には一抹のさびしさもあるのだった。(中略)
『結界』の原稿を読み了えてつくづく思ったことは、実力のある俳人は句集を出すべきだということであった。毎月の句会で数句を発表するだけでは、その人の真価を知るには至らない。山本好子さんが句集出版を決心されたのは本当によかったと思う。これによって、著者が確乎たる俳人であることが証明されるのである。林翔(序文より)
春惜しむ茶事に釣釜ゆれやまず
我が命脈々として初湯かな
霧の向うに妣の声する白かんば
襁褓替ふ花の絨毯敷きつめて
なんばんの赤きが夕日つかみたる
飛び石を伝ふ眩しさ紅葉渓
「もういいかい」鬼は夕焼に染められて
序文・林翔 題字・山本信雄
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 210頁
●著者略歴
昭和10年北海道空知郡富良野町に生まる。昭和54年沖入会、林翔に師事。「沖」会員