明澄でワイドな視点と、微に入り細の求心の眼で、四季折々の実相、日常を、自由に、骨太に詠いあげる。昭和61年から平成13年までの320句を収録。
◆ 求心の眼 著者第一句集
<葉がくれの蓮の蕾も立ちあがる>
「立ちあがる」が時節到来とばかり自己主張してやまぬ人間をも彷彿させる。
<黙祷の間も首を振り扇風機>
われ関せず焉と無関心をよそおう扇風機が、かえって人々の悲しみの深さを表現。
<枯れざまの懸命なりし枯芭蕉>
枯れ芭蕉のありようを活写して余すところがない。
『大暑』一巻を貫く特色は骨太な詠いぶりにあるといえよう。
鷹羽狩行(帯文より)
新涼や鯉の背鰭の風に触れ
父の忌と母の忌の間の大暑かな
太陽を足先へ呼び日向ぼこ
落鮎やいたはるやうに日の渡り
ががんぼの脚ふんばつて憤る
序句/鑑賞句/帯文・鷹羽狩行 跋文・彦根伊波穂
装丁・君島真理子 四六判上製カバー装 196頁
●著者略歴
本名は信治。昭和8年6月22日生まれ。熊本県出身。昭和62年「狩」入会。平成4年11月NHK学園全国俳句大会大会賞受賞。平成5年3月同上優秀により文部大臣奨励賞受賞。平成5年2月毎日俳壇賞受賞。平成9年狩同人。平成12年俳人協会会員