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◆ 著者第二句集
第一句集『水煙』に対して「『われ』の『いま』を詠う確かな技術。揺ぎない感性」と評言された五千石師。第二句集『沖雲』の近詠では、師より高い評価を得た「技術・感性」に更なる深化と拡幅が生まれたようである。
また古稀を迎えて「齡寂び」の情趣も加わり、今後益々楽しみである。
平沢陽子(跋文より)
<束の間に沖雲育つ海開> 「あとがき」にもあるように「自分も自然の一部です。自然を表現することは自分を表現する事……」まさに言い得て確か。句の世界を照らす自然の光とふかく交わる事こそ、定子俳句の、ふっくらとした内容の自然諷詠が成り立つものと思われる。
自然を抒情することは、自分が自然への存在を果たすという事になるのであろう。
「束の間に沖雲育つ海開」の句は、本句集の題名になった句であるが、「海開」の情景が「沖雲」との遠い関係と相俟って、自らへの願望と重なっている。
三田きえ子(帯文より)
源流の岩滴りにはじまれり
鎮魂のごとき山辺の夕焚火
天も地も彩をうしなふ流氷期
お気が済むまでの無心の日向ぼこ
折々のうた折々の桜かな
清流の一にも二にも山葵沢
野に出でて日永の天を頂きぬ
序句/帯文・三田きえ子 跋文・平沢陽子
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 204頁
●著者略歴
昭和7年東京都品川生れ。昭和58年「畦」入会。上田五千石に師事。平成10年「かなえ」入会。本宮鼎三に師事。平成12年誌名が「萌」と改められ、引継いだ三田きえ子主宰に師事して現在に至る。平成9年第1回毎日俳句賞大賞受賞。平成11年第1回かなえ賞受賞。「萌」同人。俳人協会会員