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◆ 著者第一句集
<母に炊く筍飯でありにけり>
二十四孝の一つとしてよく知られる故事、寒中に筍を掘って、それを食べたいという親の食膳に供した、孟宗の話が思い浮かぶ。とはいえ、それにあまりこだわっては、この句の正しい鑑賞とはならない。むしろより単純に解釈し、眼前只今の事実の写生として、味わいとりたい。美味しそうな、旬の筍が手に入った。何はさて措き、筍好きの母のために、筍飯を炊くことにした。炊き上がるほどに、筍の香が漂ってくるのである。
山崎ひさを(序文より)
譜面見る夫のかたへに毛糸編む
秋の灯に夫の指揮棒遺りけり
オリオンの一つを吾子として仰ぐ
雪掻きて娘の出勤を送りけり
ぬば玉の闇に火の散る鍛冶始
鴨五万白鳥七千湖昏るる
序文・山崎ひさを 装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装 180頁
●著者略歴
昭和7年3月21日新潟県三条市生れ。昭和57年「青山」創刊に参加。山崎ひさを先生に師事、現在に至る。青山同人、俳人協会会員