日常の中に見出した懐かしい子供の頃の体験、ともすると見過ごしてしまいそうなものの中から発見した命の営みなどを表現した句集。
◆ 自然とともに 著者第一句集
<叱られることを承知の水鉄砲>
日常生活の中に見出した、懐かしい子供の頃の体験。
<寸の草さへ種を持ち豊の秋>
ともすると見過ごしてしまいそうなものの中に、命の営みを発見。
<田に敷きし藁まき上げて春一番>
美しい日本の自然の原風景を、季語によって再現。
句集『初硯』には、人間と自然を謙虚に詠って、読む人の心に沁みる世界が広がっている。鷹羽狩行(帯文より)
特色の第一。
登美子さんの句には、人間味あふれる「おかしみ」「ユーモア」を感じさせる句がたくさんある。人間らしさを突いた笑いに、たっぷりと引き込まれてしまう。
第二の特色。
登美子さんは朴訥、登美子さんの人生は朴直、登美子さんの世界は朴実、登美子さんにはかざりけがなく、その「朴」が俳句ににじみ出ている。
第三の特色。
登美子さんの作品を見ていると、小さな生き物、小動物を詠んだ句がよく出てくる。登美子さんは農事の中で、自然の恩恵をうけ、自然のいのちにふれ、自然にとけ込み、自然とともに生きておられる。小さな生き物への感動もそこから生まれるにちがいない。岬 雪夫(跋文より)
児の留守と見て動き出すかたつむり
誘ひ合ひまたそむきあひ芋の露
高きへと風を求めて松の芯
白地着て少し意固地になりし夫
うららかや敷居へだてて糸電話
凧の尾の長きを神の田へ垂らす
序句/鑑賞三句・鷹羽狩行 跋文・岬 雪夫
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 185頁
●著者略歴
大正13年12月20日岐阜県生まれ。昭和60年「狩」入会。平成6年「天衣」入会、同人。平成8年狩同人