紺糸の女人の鎧春の潮。大学時代から今日までの著者の第一句集。中心は「子育て」をうたったもので、どの句もきちんとしていて、抒情に流されない乾いた美しさがある。みみづくが好きみみづくのみみが好き。全三百句。
◆ 著者第一句集
『天真』は横井理恵さんの第一句集で、大学生時代より今日までの三百句を納めている。天真は理恵さんの性格をよく表して適切である。
理恵さんは第一に二人の男の子の母である。そしてドイツ文学者の夫人として、愛情に満ちた知的一家の中心である。と同時に、東京外国語大学の留学生日本語教育センターで、正しい日本語を教えることに日夜苦心を重ねている。その上に新鮮な感覚を持つ俳人である。(中略)
理恵さんの句はきちんとしていて、叙情に流されない乾いた美しさがある。この知性的な乾いた叙情は、今後どのように発展していくであろうか。伝統を継ぐ新人として理恵さんが、更に大きく飛躍させることを期待している。有馬朗人(序文より)
紺糸の女人の鎧春の潮
春寒や腹帯きりり締めあげて
花燦燦助産婦さんの金眼鏡
うららかやおもちやの汽車は事故ばかり
かなかなや児のもいで来る畑のもの
みみづくが好きみみづくのみみが好き
序文・有馬朗人
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装
●著者略歴
本名・尾方理恵(旧姓・横井)。昭和41年1月13日、兵庫県生まれ。広島市、横浜市で幼年期を過ごし、小学校五年生より東京都民。昭和63年、在学中に東京大学学生俳句会(本郷句会)に参加。有馬朗人の下で句作に励む。平成2年、「天為」創刊より参加。平成4年、「天為」同人、俳人協会会員。平成10年まで、東京大学大学院に在籍(日本語日本文学専攻)。現在、東京外国語大学留学生日本語教育センター講師