◆ 著者第一句集
<胡弓の音風を慰め風の盆>
<阿波踊習ふ娘に母の笛>
風の盆の胡弓の物悲しさはよく詠まれているが、胡弓の音が風を慰めていると感じ取ったところに、この著者の心の深さが見える。阿波踊の母娘の句は、有名な踊を全く別の角度から詠んで、伝統の芸のあり方をそこはかとなく描いたもの。深い洞察を胸深く畳んで、言葉をしっかり選び、ぎりぎりまで省略を効かせた見事な句は、これらの他にも集中数多い。著者の取材の広さと相俟って、読者は日本中の名所旧蹟を案内される心地がするであろう。後藤比奈夫(序文より)
若狭路や雪に埋もれし仏たち
大門を潜れば浄土雪高野
春の潮鬼の洗濯板洗ふ
トテ馬車に昇仙峡の風涼し
幻の岩魚隠れて釣るがこつ
落柿舎の蓑を借りたき初時雨
序文・後藤比奈夫 金婚祝句・後藤比奈夫
装丁・伊藤鑛治 四六判上製函装 190頁
●著者略歴
本名、功。大正13年大分県生。昭和18年徳島高等工業学校土木工学科(現徳島大学)卒。同年間組株式会社(大阪支店次長)。昭和57年山崎建設株式会社(取締役営業副本部長)。平成5年国際航業株式会社顧問。平成10年本州コンサルタント(株)顧問となり現在に至る。技術士(建設部門)。現在、「諷詠」同人・(社)俳人協会会員・大阪俳人クラブ会員