何気なく見過ごしていた日常生活の中の新たな発見と驚きを17文字によって現した、294句を収録した第1句集。
◆ 著者第一句集 〜故郷の四季を詠いとめる〜
<ダビデ像仰ぎ身の汗しづまりぬ>
どこの町であろう。暑い日射しの中、建物に入って、大きなダビデ像を仰ぐ。「身の汗しづまりぬ」に敬虔な気持がよく托されている。
<切干しの良く乾きゐる日向かな>
日当りのよい農家の庭先、拡げた筵の上に、刻まれた大根が一杯に干されている。日を経て、白い大根の一片一片が少しづつ黄金色に干し上ってゆく。今まさに丁度よく乾き上ったところである。地味だが、対象凝視の目が行き届いている。
山崎ひさを(序文より)
長い冬の雪解けを待っていっせいに花開き山野を飾るのはそれはそれは美しく、春を待ち望む越後の人々の心躍る一刻でもあります。この豊かな自然に恵まれた地で暮しながら、故郷の四季を詠いとめることの喜びをこれからも持ち続けたいものと願っております。著者(あとがきより)
紙漉場明り窓まで雪の嵩
薫風や幟に御岳百草丸
川風に吹かれ大凧揚げを待つ
木釘打つ箪笥工房日脚伸ぶ
旅人としてマロニエの落葉踏む
茸狩の籠のぞかせてもらひけり
序文・山崎ひさを 装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装 177頁
●著者略歴
昭和6年10月1日山形県酒田市生れ。昭和25年から新潟市在住。昭和58年「青山」入門、山崎ひさを先生に師事。現在に至る。青山同人、俳人協会会員