◆ 著者第一句集
<大牡丹支へられてもなほ傾ぐ>
<折目つく国旗を立てし大旦>
ごく初期の頃から、ものを見る目が働いている。しっかりと見て取ったものを、具体的に表現しようとする姿勢が出来ている。このことは、俳句という表現を得る以前から注意深くものを見、何かを感じ取っていた美恵子さんの資性を物語っていよう。
<夕日さしシャーベットめく春の富士>
<銀箔をもみたるごとき秋の海>
これらの句に見られる雪の表面の質感、内側から滲み出るような色あい、深みのあるつや、水の面のきらめきには、独特の感受性と把握とがある。これは作者が作陶に関わって来たことと無縁ではあるまい。ものを創り出す喜びを知っている人は、自然界の美に敏感だ。
葉桜に見えかくれしてお席入り
ハンドルに足をつつこみ三尺寝
落葉径通せんぼせし鴉かな
滝凍るお化けしめじのやうにかな
暁空に残りし月や窯始
序句・行方克巳 序文・西村和子
装丁・君嶋真理子 四六判並ソフトカバー装 216頁
●著者略歴
1921年朝鮮全羅南光州に生れる。1945年終戦により京城より和歌山県海南市且来八六二に引揚る。1991年朝日カルチャー「清崎俳句教室」入門。「若葉」入会。1996年「知音」創刊同人。現在、俳人協会会員