◆ 著者第一句集
<笹の葉を少したわめて春の雪>
春の行きの微妙な質感が「少したわめて」で、みごとに言いとめられた。
<かしづくがごとくに育て寒牡丹>
冬牡丹を育てる人の深い思いが「かしづく」の表現にこもる。さらに本句集には、
<貴婦人も草刈る人もサリー着て>
をはじめとする海外吟にも秀作が多く、著者のふところの深さを示す。
鷹羽狩行(帯文より)
<おほらかな輪ひとつ結び柳かな>
という作品が本句集に収められている。これはどこか、伊藤さんの姿のように思えてならない。「結び柳」という新年の季語じたいにおおどかな趣があるのだが、「おほらかな輪ひとつ」ととらえたところに、いかにも伊藤さんらしい落ち着きと晴れやかさが感じられる。片山由美子(跋文より)
安らぎをかたちにすればうろこ雲
葉桜や旅装をとけば風あふれ
神々の台か泰山木の花
木と紙の家のぬくもり十三夜
とどまれば風が背を押す花野かな
序句/鑑賞三句/帯文・鷹羽狩行 跋文・片山由美子
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 190頁
●著者略歴
1932年東京都中野区生まれ。1988年「狩」入会。1999年狩同人。2000年俳人協会会員