◆青春の句集
瑞鳥の貌して鵯のおりて来る
中正さんの俳句を読んで何度も感じるのは、爽やかさ、男らしさであり、溢れる抒情である。そのことは、本句集を読むと、はじめから一貫していることが分る。更に熊本という風土を心から愛し、日々を真っ当に生き、学問に、俳句に精進して来られたから、作品に豊かに結実したのだとつくづく思う。
掲句は、その中正さんという作家にふさわしい、花鳥諷詠の一句と云えよう。
(帯より:深見けん二)
◆自選十五句より
これよりはスコットランド夏薊
鵯は実を人は煙草をこぼし去る
霜の夜に育ちて吾子の睫かな
神小さきものに宿れば吾亦紅
刈萱の高さにものを考へる
町暑しカレーライスに待たさるる
初雪になるかもしれぬ夜の集ひ
花冷のペンの先より詩の生るる
秋天に漕ぎ出す櫂もなかりけり
子規よりもみんな長生き子規祀る
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[いわおかなかまさ(1948〜)「阿蘇」主宰]
帯:深見けん二
装丁:和兎
四六判並製カバー装
216頁
2011.12.25刊行